個人投資家は長い間、上場株式と債券の分散ポートフォリオが成功する退職積立資産形成の鍵であると教えられてきました。特に過去14年間、金融緩和政策が資本コストを低下させ、公開取引される高リスク資産の価格高騰を招いた時期にはこの定説は有効でしたが、2008年に始まった米国の金融緩和の終了を含むいくつかの長期的トレンドの転換により、パブリック市場志向の投資戦略は効果が薄れ、よりリスクの高い戦略となる可能性さえあります。
重要なポイント
- 上場株式と債券で構成される分散ポートフォリオが成功する退職積立資産形成の鍵であるという長年の定説は、2008年に始まった金融緩和による大量の資金供給の終焉を含む、現在の金融市場での長期的なトレンドの転換により、今や見直しを迫られて います。
- 上場企業の数が減少し、リスクの集中が進み、相関性が高まり、競争が激化し、超過リターンを得られる機会が減少しています。これら全ての要因が重なっ た結果、投資家がパブリック市場で得られる投資機会が減少しています。
- プライベート市場が成長を続ける中、投資家は戦略 的資産配分の枠組みを再考し、ポートフォリオにオルタナティブ資産を加える、またはその配分を増やすこ とによって、ボラティリティを抑制し、潜在的なリスク調整後リターンの向上を目指すべきです。
- 本稿では「オルタナティブ資産」とは、単純にパブリッ ク市場で取引される株式と債券に代わるものと定義 しており、投資適格のクレジットから株式まで、リスク・ リターンスペクトラムのあらゆる分野で、リスク単位あたりの超過リターンを目指すものと捉えています。
- この視点で捉えなおすと、投資家はプライベート市 場においても、パブリック市場と同様に、様々なリスクスペクトラムを探求できることが明白となります。重要な相違点は流動性です。ある程度の流動性の欠如を許容できる投資家は、オルタナティブ投資の恩恵を享受できる立場にあると考えます。