2024-10-10
Regional Q&A|岡本哲士氏と松尾憲明氏が語るアポロの日本戦略
このたび、岡本哲士氏(Lead Partner, Japan)と松尾憲明氏(Head of Strategy, Japan)が、「高齢化が進む日本における退職後資産形成の必要性の増大」と「投資家にとって、プライベート市場への投資戦略がパブリック市場のボラティリティに対応するため、どのように役立つのか」について対話しました。
また、プライベート資本として、日本企業が不確実性の中で舵取りを行い、成長を促進させ、変化していく経済・社会ニーズに対応する際、それを後押しするためどのようにカスタマイズされ、柔軟なソリューションを提供できるのかについても考察します。
アポロは、長年にわたって日本市場にコミットしてきました。東京拠点のチームは人員拡大し、資産運用から退職後資産形成ビジネスに従事しています。このたび、アポロの岡本哲士氏(Lead Partner, Japan)と松尾憲明氏(Head of Strategy, Japan)が、日本の経済および退職後の運用トレンドと日本のプライベート投資市場の見通しについて見解を述べました。
ここ数年におけるアポロ日本の成長は、どのようなものでしたか?アポロのアジア戦略の中で、日本はどう位置づけられていますか?
岡本:アポロ日本は、2019年に東京オフィスを開設して以来著しい拡大を遂げてまいりました。投資側では、プライベート・エクイティ、ハイブリッド、クレジットの投資プロダクトを通じて、70億ドル超(約1兆円)の資金を投入し、日本の企業とスポンサーの大型資金ニーズに応えてきました。直近では、パナソニック オートモーティブ システムズ社への投資に関し、パナソニック グループとの21億ドル(約3000億円)のプライベート・エクイティ案件を発表しました。また、当社のGlobal Principal Structured Finance部門を通じて、日本を代表するグローバル企業であるソニーグループの関連会社ソニー・ミュージックに7億ドル(約1000億円)を投資することも発表しました。
さらに、当社は日本の機関投資家の資産配分の優先順位の変化や、個人の投資・資産形成ニーズに対応できるよう、強力な販売体制を構築してまいりました。特に、保険会社アテネ社経由で当社が提供するリタイアメント・サービスおよび再保険事業、その他、超過利回りを提供できる個人向け退職者向け貯蓄商品とグローバル・ウェルス(リテール投資家向けサービス)商品は、まさに日本市場の特徴に対応したプロダクト群と言えるでしょう。
日本の人口構成の変化や金融政策によって、退職者層のニーズはどう変わりましたか?
岡本:多くの成熟した社会がそうであるように、日本でも人口の高齢化に伴い、退職者層の資産形成に対するニーズが大きく変化していると感じます。これまでの超低金利を伴うデフレ期間中、貯蓄する多くの日本人にとって、やはり現金に優るものはありませんでした。現金以外のものに資産を配分したい人々にとって、日本のパブリック(上場)株式は、しばらくの間はリターンを生むアセットクラスでした。しかし、インフレとなった今、金利も上昇し、現金やアンダーパフォームする上場株式に過度に配分した方々は、自らの投資戦略を見直しており、その傾向は、日本の上場株式の最近の急落により一層顕著なものになりました。これにより、ポートフォリオの一部をプライベート市場の資産に切り替えようとする投資家の動きが加速するでしょう。
松尾:日本の個人層、特にこれから退職を迎えようとする方や、すでに退職された方には、優良で安定性のあるフィクスト・インカム商品へのアクセスが急務と考えています。そうした資産、例えば、アポロのプライベート・クレジット戦略は、投資家がボラティリティに対処し、上場市場に対する超過スプレッドを生み出す機会を提供する上で役に立つと思っています。ここ数年間、日本では個人および機関投資家双方からのプライベート・クレジットに対する需要が増大していると感じています。
アポロは特に退職者層向けソリューションの分野では、日本の金融機関とどのように提携していますか?
松尾:当社は、日本の銀行、証券会社、保険会社と深く協業させて頂いています。なぜかと申し上げますと、当社の専門的知見や革新的なオルタナティブ投資商品と本邦金融機関の皆様や金融機関の顧客のニーズが合致するためです。当社は当該協業により、これまで広義のオルタナティブ投資/プライベート資産へのアクセスを持たなかった日本の様々な機関投資家、個人投資家(退職資産形成ニーズ)に対し、革新的なプライベート資産の商品を提供しています。これらの商品は、投資家の資産の形成と保全の両方に資するものとなりえますし、多くの場合、パブリック市場における投資戦略よりもボラティリティーが低くなります。
アポロは、再保険/資産運用においても金融機関の皆様と協業させて頂いています。当社では、傘下の保険事業の資産運用のため、投資適格のプライベート・クレジットを世界中で組成しています。保険会社の皆様とこのようなプライベート・クレジットについて協議・協業させて頂くことが多くなりました。投資適格のプライベート・クレジットは、長期的に安定した利回りを提供し、退職資産形成に適しており、最終的には個人の資産形成における金融収益の目標を達成するのに役立ちます。
日本企業は不確実性の中で針路を定め、成長しようとしていますが、現在の状況において、エクイティ、ハイブリッド、クレジット等のプライベート資本の活用についてどのように考えているのでしょうか?
岡本:日本企業は歴史的に、大規模な資金の調達先として、主に大手銀行に頼ってきました。しかし、日本企業としてグローバル市場においてより競争力を強化する必要性と喫緊性が増す中、アポロのようなプレーヤーが大規模かつ柔軟な資金提供をすることに対し、明らかなニーズが生まれてきております。攻め・守り・変革期対応、いずれの状況であれ、それぞれの状況に合わせてカスタマイズされたソリューションが必要であると考えます。プライベート資本は、スピードと確実性を提供できるため、企業の資金調達の源泉として、日本において徐々に市民権を得てきていると考えています。
日本企業がこれからもプライベート市場に適応していくにつれ、カスタマイズされた既存融資に補完的な資金供給の機会を見出せると思っています。例えば、ハイブリッドソリューションによる資金供給の機会です。当社が重点を置くのは、伝統的なデットとエクイティの中間に位置する金融サービスがまだあまり提供できていないセグメントです。日本の創業者や経営陣が、経営支配権を手放さないで、あるいは株式発行による希薄化を避けながら事業を改革しようとする場合、ハイブリッド資本を選択肢の一つとして検討するようになってきています。
また、日本のプライベート・エクイティにも、引き続き大きな機会が見受けられます。特にグローバル市場において当社が差別化された経験を有するセクター、高い複雑性を伴う状況や、売却側或いは提携先との強力な協調・協業が求められるパートナーシップ案件です。そうした機会は、事業会社のカーブアウト案件で求められる傾向が強いです。当社は、日本の大手事業会社と提携し、そのような取引を4件履行することに成功しております。これらの案件では、業務の混乱を最小限に抑えながら、従業員と顧客の双方にとってWin-Winとなる状況を創出する機会を見出しております。
日本におけるプライベート資本のソリューションについて、今後どのような見通しを持ちますか?
岡本:日本には、プライベート投資において、非常に大きな機会があると感じています。日本企業はこの先、非常に大きな投資が必要となるエネルギー転換等の世界的な変革期に対応するため、プライベート資本によるソリューションの必要性は一層高まると考えています。
アポロは引き続きイノベーションを重視し、差別化したプライベート資本によるソリューションを一貫して日本市場に提供し続けるように尽力します。我々はアポロとアテネを通じて、資産運用と退職資産形成サービスのための統合されたプラットフォームを運営しています。このプラットフォームは、大規模かつ柔軟な資本ソリューションを提供する上で、日本において唯一無二の存在になることができると確信し、これからアポロが日本経済・企業に提供できる可能性の大きさについて非常に楽しみにしております。